- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/30
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フェルマーの最終定理(Wikipediaより)
この本を読むまで、この定理の証明に二人の日本人数学者*1が重要な役割を果たしていることを知りませんでした。
本筋よりも印象に残った部分−その1
217ページから引用 こばなし↓
◇知識の基礎
〜省略〜
数学者という人たちは、完全な証明がされないうちはどんな主張も認めないことで知られている。イアン・スチュアートは『現代数学の考え方』のなかで、数学者たちのそんな評判を伝える小話を紹介している。
天文学者と物理学者と数学者(とされている)がスコットランドで休暇を過ごしていたときのこと、列車の窓からふと原っぱを眺めると、一頭の黒い羊が目にとまった。
天文学者がこう言った。「これはおもしろい。スコットランドの羊は黒いのだ」
物理学者がこう応じた。「何を言うか。スコットランドの羊のなかには黒いものがいるということじゃないか」
数学者は天を仰ぐと、歌うようにこう言った。「スコットランドには少なくとも一つの原っぱが存在し、その原っぱには少なくとも一頭の羊が含まれ、その羊の少なくとも一方の面は黒いということさ」
一般の数学者よりもさらに厳密なのが、数理論理学を専門とする数学者たちである。
〜省略〜
本筋よりも印象に残った部分−その2
234ページから引用 パラドックスのはなし ↓
〜省略〜
ゲーデルの第一定理もエピメニデスの”クレタ人のパラドックス”あるいは”嘘つきのパラドックス”と呼ばれるたとえ話で説明できる。エピメニデスはクレタ島の出身だった。その彼がこう主張した。
「私は嘘つきだ」
この主張の真偽を突き止めようとするとパラドックスが生じるのである。まず、この主張が真だと仮定するとどうなるだろうか? 主張が真なら、エピメニデスは嘘つきだということになる。しかしわれわれは最初にこの主張は真だと仮定したのだから、エピメニデスは嘘をついていない−−−−パラドックスである。
逆に、主張が偽だと仮定するとどうなるだろう? 主張が偽なら、エピメニデスは嘘つきではないことになる。しかしわれわれは最初にこの主張は偽だと仮定したのだから、エピメニデスは嘘をついているはずである−−−−またしてもパラドックスに落ち込んでしまう。
主張を真と仮定しても偽と仮定しても矛盾に陥るのだから、この主張は真でもなければ偽でもないということになる。
ゲーデルは嘘つきのパラドックスを焼き直し、そこに証明という概念を持ち込んだ。そうして生まれたのが次の命題である。
この命題は証明できない。
もしもこの命題が偽だとすると、この命題は証明できることになる。しかしそれはこの命題(自分自身を証明できないと述べている)に矛盾する。したがって、矛盾を避けるためにはこの命題は真でなければならない。しかしこの命題が真だったとしても、それを証明することはできない。なぜならこの命題(それは真である)がそう主張しているからである。
ゲーデルはこの命題を定式化することで、真であるが決して証明できない命題、いわゆる”決定不可能”な命題が存在することを示すのに成功したのだった。これはヒルベルト・プログラムにとって致命的な打撃となった。〜省略〜
この文庫本ぜひ一読されることをおすすめします。
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